「自己破産」に関するQ&A
債務整理をした場合、賃貸マンションの契約ができなくなることはあるのでしょうか?
1 これから賃貸マンションの契約をする場合
⑴ 原則として債務整理の影響はありません
債務整理を弁護士に依頼した後に賃貸マンションやアパートを契約する場合でも、通常、賃貸マンションの契約を断られることはありません。
債務整理を弁護士に依頼すると、信用情報(いわゆるブラックリスト)に事故情報が掲載されます。
なお、弁護士に依頼する前に既に延滞に陥っていた場合は、その旨が信用情報に記載されています。
とはいえ、信用情報は誰でも見られるものではありません。
信用情報を確認できるのは、信用情報機関に加盟している貸金業者等に限られます。
通常、住宅の賃貸人や賃貸物件の仲介会社は信用情報機関に加盟していませんので、信用情報を確認することはできません。
したがって、事故情報を知り得ない以上、原則として賃貸人や仲介業者から契約を断られることはないのです。
⑵ 例外的に影響がある場合
ただし、賃貸借契約にあたって保証会社を利用する場合、保証会社から保証を断られる可能性があります。
保証会社の一部は信用情報機関に加盟しているため、保証を行うかどうかの判断にあたって、信用情報を参照することができます。
そのため、賃貸借契約の際に保証会社の利用が必須になっている場合は、保証会社が事故情報を理由に保証を断ると、賃貸借契約自体を締結できないということがあり得ます。
なお、賃貸保証会社でも、信用情報機関に加盟していない会社の場合は、信用情報を確認できませんので、保証を受けることが可能です。
また、家賃の支払いをクレジットカードで行う等、賃貸借契約の条件としてクレジットカードの契約が必須になっている場合もありますが、信用情報に事故情報が掲載されていると、クレジットカードを持つことが難しくなるため、事実上賃貸借契約も難しくなるということがあり得ます。
家賃の収納代行サービスを利用する場合も同様です。
2 既に契約している場合
⑴ 破産では解約できません
民法は、かつて、「借主が破産した場合には、契約期間内であったとしても、貸主は解約の申入れをすることができる。」と定めていました(旧621条)。
しかし、この条文は平成16年の民法改正で廃止されましたので、現在の民法の下では、破産を理由として貸主は賃貸借契約の解約申し入れをすることはできません。
⑵ 破産以外の債務整理も同様です
破産以外の債務整理(個人再生、任意整理)についても、そのことのみを理由として賃貸借契約を解約されることはありません。
民法上、個人再生や任意整理を理由とする賃貸借契約の解約申し入れを認める規定はありませんし、破産を理由とした賃貸借契約の解約申し入れが認めらないと考えられることとの比較から、そのように考えるのが妥当だと思います。
⑶ 家賃がクレジットカード払いの場合
賃貸借契約締結の際の条件により、家賃がクレジットカード払いになっている場合には注意が必要です。
個人再生や自己破産の場合は当該クレジットカード会社を対象から外すことはできませんし、任意整理の場合でも、当該クレジットカード会社を対象にする場合はもちろん、対象から外す場合であっても、信用情報機関に事故情報が登録されることには変わりないので、任意整理の対象としないクレジットカード会社のカードの新規利用もできなくなり、家賃の支払いに使うことができなくなることがあり得ます。
クレジットカード会社は、定期的に契約者の信用情報を確認しているためです。
この場合は、前もって家主(賃貸管理会社)に連絡し、家賃の支払方法を変更してもらうことになります。
単なる支払方法の変更の申し出ですので、これにより直ちに賃貸約契約が解約されることはまずありません。
⑷ 家賃を滞納している場合は解約される可能性があります
上記でした説明は、家賃の滞納がないことを前提としています。
滞納している家賃が3か月分程度になった場合は、通常、賃貸人との間の信頼関係を破壊したと認められますので、賃貸人は、債務不履行を理由として賃貸借契約を解除することができます。
これは債務整理手続とは関係なく、あくまで家賃を滞納したことを理由とした解除になります。
任意整理の場合は、貸金業者やクレジットカード会社の負債について、任意整理により月々の返済の負担を減額し、余裕の生まれた分を滞納家賃の返済に充てることができれば、家賃滞納の問題は解消できます。
しかし、個人再生や自己破産の場合は、滞納している家賃は再生債権または破産債権となりますので、滞納家賃のみを弁済してしまうと、破産では免責不許可事由の一つである偏頗弁済に該当します。
家賃を滞納している状態で個人再生や自己破産を行う場合、賃貸借契約を解除されないためには、事前に家主などと協議しておくことが重要となります。
この場合は、必ず債務整理を委任する弁護士に相談してください。
3 債務整理後の賃貸借契約更新で注意すべきこと
⑴ 賃貸借契約の更新拒絶には正当理由が必要
賃貸人が賃貸借契約の更新を拒絶するためには、正当な理由が必要であるとされています。
この点、債務整理を行った事実そのものは、更新拒絶の正当理由になることはまずあり得ませんので、心配する必要はありません。
⑵ 家賃保証の更新が断られる可能性あり
しかし、家賃保証会社を利用している場合で、その保証会社が信用情報機関に加盟している場合、賃貸借契約の更新に伴う保証契約の更新の際に、信用情報に記載されている事故情報を確認した保証会社から更新を拒絶される可能性があります。
保障会社から更新を拒絶された場合は、家主に対する担保提供義務違反になりますので、保証会社に更新を断られる可能性がある場合は、事前に家主と交渉し、別の担保(十分な収入のある親族の連帯保証など)を提供すること等が必要になる場合があります。
4 債務整理のことは弁護士にお任せください
以上、債務整理と賃貸借契約について一般的なご説明をしましたが、具体的な事案においてどのように対応するかはその事案ごとに異なることがあります。
賃貸借契約書の内容も確認する必要がありますので、債務整理について弁護士にご相談する際に賃貸借契約書もご持参いただければと思います。
管財人とはどういう立場の人ですか? 自己破産する際に注意すべき点はありますか?